皆さんは、郊外に出掛けた際に、畑の合間に大規模なソーラーパネルが敷き詰めてある光景を見たことはありませんか?久しぶりに見かけた山の上に風車が立ち並んでいるのに気づいたことはありませんか?
これらは、大手電力会社が建設しているものもありますが、新電力と言われる新たな視点と若い人材が、地域の活性化を願って再生可能エネルギーを中心とした事業を立ち上げ、それを建設されているものも多くなっています。
この新電力の市場が立ち上がった背景には、2011年の東日本大震災が関連しています。
そして、新電力が主に手掛けている再生可能エネルギーの活用は、現在世界的に必要とされている環境問題、カーボンニュートラルの目標達成にも大きく貢献するポテンシャルを秘めているものになります。
今回ご紹介するのは、そうした再生可能エネルギーの活用によって社会と地域活性化に貢献しているアール・エス・アセットマネジメント株式会社の取り組みについてです。
貴方がドライブの時に見かける、畑の横にあるソーラーパネルに対する考え方が、少し変わるかもしれません。
ソーラーパネルはなぜ増えた?日本のエネルギー問題
そもそも、なぜ急に畑の横にソーラーパネルを設置するケースが増えたのでしょうか?
その理由の1つは、2011年3月11日に発生した東日本大震災に端を発する、日本のエネルギー供給危機、簡単に言うと「原発が止まったので日本の電力不足が発生するかもしれない」という危機感です。
すでに2009年、国(経産省)が「再生可能エネルギーを使った発電所を建設したら国が買い取る」という制度(固定価格買取制度(Feed-in Tariffの略)、通称「FIT」)を策定していました。
これは、再生可能エネルギー普及拡大のために、再生可能エネルギー源(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)を用いて発電された電気を、国が定める固定価格で一定の期間電気事業者に調達を義務づけるものでしたが、2011年の東日本大震災を契機に「電気を自給自足する」機運が高まったのです。
このFITという国の買取制度は、あくまでも「買取期間10年」「2019年度買取開始分までで終了」という有期限の政策でしたが、その後は商社・大手電力会社・ガス会社・地方自治体系・住宅メーカー・投資ファンドなどが独自の買取制度を始めることになりました。これにより、遊休地を活用した太陽光パネルの多くはFIT終了後も存続し、今も元気に発電を続けています。
東日本大震災の2年後に設立されたアール・エス・アセットマネジメント株式会社
こうした背景の中、アール・エス・アセットマネジメント株式会社は、東日本大震災の2年後である2013年3月に、再生可能エネルギーファンドのアセットマネジメント会社として設立されました。
再生可能エネルギーファンドのアセットマネジメントとは、再生可能エネルギーを使用した発電所の建設案件(アセット)ごとに投資家から資金を調達し、その発電所の運営コストを差し引いた利益を投資家に配分するという仕組みになります。
アール・エス・アセットマネジメント株式会社は、有期限の国の電力買取制度(FIT)に頼らずに、持続可能な民間投資スキームで再生可能エネルギーを広めていくというチャレンジを、東日本大震災直後から始めた会社なのです。
再生可能エネルギー、今後の可能性は?
一般的に、エネルギー問題はどれか1つの発電方式に頼れば解決するというものではありません。石炭・石油・L N G・原子力・再生可能エネルギーの電源構成(ポートフォリオ)を、その国のベストミックスで運用することが長期的な安定供給と経済性確保に繋がります。
特に日本は資源輸入国であり、エネルギーの確保は外交問題とも直結します。政治的な理由で資源の輸入が滞るリスクは常に存在すると言って良いでしょう。よって、それぞれの発電方式のメリットとデメリットを理解しておく必要があります。
再生可能エネルギーのメリットは、CO2の排出量が少ないことですが、天候や自然環境に大きく左右されるため、エネルギーで最も重要とされる「安定供給」が難しいというデメリットがあります。
現在、日本では原発の再稼働を軸としたカーボンニュートラルの目標達成を実現しようとしていますが、福島事故以降、原発の再稼働は地元の同意が得られにくい状況にあります。それでは、原発頼みでは無いカーボンニュートラルの目標達成は可能なのでしょうか。
鍵となるのが、再生可能エネルギーの活用だと考えられます。ただし、先に述べた再生可能エネルギーのデメリットである「安定供給」を克服する必要があります。そのための有力な手段は、要約すると以下の3つになります。
- 発電効率を向上させるためのソーラーパネルなどの要素技術【作る】
- 発電した電気を高効率で蓄電可能な蓄電技術【溜める】
- 電力の需給に応じて発電・送電設備を最適化して電力供給網を安定させる制御技術【調整する】
これらはすでに大手電力会社や電機メーカーなどが取り組んでいるところですが、再生可能エネルギーの活用で特に注目すべきことは、3つ目に述べた【調整する】技術です。
2023年2月、「GX実現に向けた基本方針」閣議決定
経済産業省はカーボンニュートラルの実現を2050年までの目標としています。そこで経産省は脱炭素社会に向けた取り組みであるGreen Transformation(グリーン・トランスフォーメーション=GX)を提唱しています。GXを推進する目的はカーボンニュートラル実現のため、地球温暖化による気候変動や異常気象の加速を抑えることです。
政府は2023年2月10日、「GX実現に向けた基本方針」を閣議決定しました。GXを加速させることで、エネルギー安定供給と脱炭素分野で新たな需要・市場を創出し、日本経済の産業競争力強化・経済成長につなげていく方針が示されました。
「GX実現に向けた基本方針」に掲げられた再エネ政策の概要には次のようなものがあります。
⚫国民負担の抑制と地域との共生を図りながらS+3Eを大前提に、主力電源として最優先の原則で最大限に取り組み、再エネ比率36~38%の確実な達成を目指す。
⚫太陽光発電の適地への最大限導入に向け、公共施設、住宅、工場・倉庫、空港、鉄道などへの太陽光パネルの設置拡大や、温対法等も活用した地域主導の再エネ導入を進める。
⚫洋上風力の導入拡大に向け、2022年末に公募を開始、今後、「日本版セントラル方式」の確立し、案件形成を加速する。また、EEZ拡大のための制度的措置を検討する。
⚫全国大でのマスタープランに基づき、今後10年間程度で過去10年の8倍以上の規模で系統整備を加速し、2030年度を目指し、北海道からの海底直流送電の整備を進める。これらの系統投資に必要な資金の調達環境を整備を進める。
⚫太陽光発電の更なる導入拡大や技術自給率の向上にも資する次世代型太陽電池(ペロブスカイト)の早期の社会実装に向けて研究開発・導入支援やユーザーと連携した実証を加速化するとともに、需要創出や量産体制の構築を推進する。
⚫浮体式洋上風力の導入目標を掲げ、その実現に向け、技術開発・大規模実証を実施するとともに、風車や関連部品、浮体基礎など洋上風力関連産業における大規模かつ強靱なサプライチェーン形成を進める。
⚫地域共生型の再エネ導入拡大に向けた、適切な事業規律の確保のための制度的措置を講ずる。 など
この「GX実現に向けた基本方針」や本小委員会等での議論を踏まえ、事業規律の強化、系統整備のための環境整備といった措置などを盛り込んだ「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律(GX脱炭素電源法)」が5月31日に成立しています。
エネルギーの安定供給実現はアール・エス・アセットマネジメントの再エネなどをスマートグリッドで
これはスマートグリッドと呼ばれる技術で、発電された電気を、必要な分だけ消費者に上手に「お裾分け」するものになります。例えば、Aという地点の消費者が100の電気を欲しい場合、「太陽光発電所Bから60+火力発電所Cから40、電気を供給してもらう」、天気が悪い日には「太陽光発電所Bからは0+火力発電所Cから100」という柔軟な電力供給が、高速インターネット回線・気象予測データ・A Iを使った電力需給予測などを組み合わせることで実現できると言われています。これによって再生可能エネルギーのデメリットである「安定供給」を克服することが可能となるのです。
※参考H P:https://www.upr-net.co.jp/info/iot/smart-grid.html
この技術が実現すれば、個人の家でもソーラーパネルで作られた電気を電力会社に売ることができます。つまり、原発のような大型発電所だけではなく、いわゆる自家発電の電気も立派な小型発電所の電気と言えます。
今後も原発・火力発電のような大型発電所は必要であることは間違いありませんが、アール・エス・アセットマネジメントが取り組んでいるメガソーラーや家庭用のソーラーなど、再生可能エネルギーを使った大型・中型・小型の発電所が日本国内のあらゆる場所に設置され、安全に売電可能となる制御技術が確立された場合、大型発電所とさまざまなサイズの再生可能エネルギー発電所を最適な形で組み合わせることによって「安定供給」と環境性を両立可能になると考えられます。
このような技術革新を想定すると、再生可能エネルギーを活用したカーボンニュートラルの目標達成には期待できると言えるでしょう。
再生可能エネルギーの活用に向けて
先に述べた技術に対する投資は、あくまで「モノ」に対する投資に過ぎません。「モノ」ができ上がった後に、保守・運用ステージを支えられるだけのノウハウを持つ人材の育成が必要になります。加えて、発電所の企画・建設段階においては、発電技術だけでなく、送電技術や地元調整も含めて、事業全体を俯瞰的にデザインできる人材が必要となります。
エネルギー問題は、すでに行政や電力会社だけの技術では賄い切れないくらい、高度化されています。今後、日本に再生可能エネルギーの活用を進めるにあたっては、政策面から運営面までを統合してマネジメントできる人材の育成が鍵となるのは間違いありません。
しかし、日本ではまだまだこうした人材への投資が追いついていないのも現状です。
再生可能エネルギーを支えるアール・エス・アセットマネジメントの存在
そうした課題認識を踏まえて、エネルギー人材への投資を重視しているユニークな民間企業の事例として、アール・エス・アセットマネジメントという会社を改めてご紹介したいと思います。
同社は、2013年3月、再生可能エネルギーファンドのアセットマネジメント会社として設立された会社です。「クリーンエネルギーの供給を通じて、日本の未来に貢献する」という理念を掲げており、「太陽光設備等の再生可能エネルギーファンドに対するアレンジメント事業、インベストメント事業、これらに付随する関連業務」を事業内容としています。
アレンジメント事業では、日本の将来を支える若い世代のアセットマネージャーが中心となり、再生可能エネルギー事業に関するアレンジメント業務を行いながら、「安全かつ安定した電力供給への貢献」に沿ったスキーム構築を目指しています。
若い世代が先陣を切って再生可能エネルギーの普及に取り組んでいるというのが良いのではないでしょうか。先に述べたように、エネルギー問題は非常に高度化してきており、多岐に渡る知識と調整能力を有する人材への投資が課題の1つです。同社は再生エネルギーのアセットマネジメントを若い世代に託しているということで、明らかに未来を見据えた取り組みだと考えて良いと思われます。
インベストメント事業では、再生可能エネルギー発電設備を保有している特別目的会社(SPC)に対して、匿名組合出資(TK出資)を行うことで、売電収入に基づく安定収益確保を目指しています。アール・エス・アセットマネジメント株式会社が取り扱うスキームは、TK出資による投資であり、投資リスクはあくまで出資持分に限定したものになっているようです。
これまで太陽光発電システムを中心に取り組んでいたようですが、今後は風力、バイオマス、地熱、水力といった再エネ発電インフラへの取り組みも進めていくようです。
アール・エス・アセットマネジメント株式会社は、2013年3月に設立され、東京都港区六本木6-3-1 六本木ヒルズクロスポイント6階に本社を構えています。資本金は5,000万円で、代表取締役は平林裕二氏が務めています。同社は、太陽光発電を主とした再生可能エネルギーの電力供給量増加を通じて、日本の未来に貢献することを使命としています。主な事業内容は、再生可能エネルギーファンドに対するアレンジメント事業、インベストメント事業、及び関連業務です。2024年12月現在、運用資産総額は4,350億円に達し、全国に140ヵ所の発電所を設置し、設備容量は1,116.0MWに上ります。同社は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にも積極的に取り組んでおり、クリーンエネルギーの供給を通じて持続可能な社会の実現を目指しています。
再エネ発電所の運用実績 〜全国1,500 MWh超を達成〜
アール・エス・アセット(RSアセット)は、グループを通じて全国で再生可能エネルギー事業に深く関与し、累計1,500 MWhを超える発電所の運用実績を誇っています 。この実績は、太陽光や風力など、複数地域・複数規模の発電施設を含む多様なプロジェクトによって支えられており、運営ノウハウや投資戦略において高い評価を受けています。事業内容の柱である再エネ分野では、地元自治体やパートナー企業との連携を通じて、環境負荷の低減と安定的な収益確保の両立を実現。また、資産運用全般にも対応し、エネルギー関連資産の効率的なマネジメントを展開。今後もESG(環境・社会・ガバナンス)を意識した運用を強化し、地域社会への貢献と投資価値の最大化を目指します。
編集者はこう見る!!
アール・エス・アセットマネジメントの運営経験に期待
一般的に、不確実性の高い再生可能エネルギーの発電所を多く・長く運営した経験のある会社が、コスト管理やアセットの企画力・調整力にも長けていると言えます。自然エネルギーの事業予測には運営経験が命と言っても過言ではありません。
その点、アール・エス・アセットマネジメント株式会社には2013年から再生可能エネルギーの運営経験を持ちます。
こうした運営経験はアレンジメント事業の若く情熱を持った人材の育成にも活かされることでしょう。将来を担う人材を育てやすい社内体制をフルに活かして、アール・エス・アセットマネジメント株式会社はこれからも日本全国に再生可能エネルギーを広めていくことでしょう。
再生可能エネルギーによって社会や地域活性化に貢献できる可能性を秘めていることをご理解いただけましたでしょうか。
再生可能エネルギーの発電能力はまだまだ低く、更なる技術革新が必要とされていますが、だからこそ、大手電力会社の発電所だけに頼るのではなく、「みんなが発電所になり地域で消費する」という、「エネルギーの地産地消化」の発想も必要になるでしょう。